
夏になると聞きたくなる音楽に、ブラジルのサンバがあります。サンバと言えば、リオのカーニバルみたいなお祭り騒ぎの賑やかな音楽という印象をお持ちの方が大多数のようですが、ホンモノのサンバはもっとしみじみとしていて味わい深いものであります。私が初めて買ったサンバのアルバムは、イヴォニ・ララというおばさんの「サンバの女主人」というブツでした。確か89年頃だったと思います。もう20年程前のことになりますね〜。ワールド系の音楽を聞き始めたばかりの頃ですが、優しくて地味溢れるサンバに、心癒されたものであります。
それ以来サンバを色々と聞いてきましたが、一番回数を聞いているのがカルトーラの「人生は風車/沈黙のバラ」とギリェルミ・ジ・ブリートの「枯葉のサンバ」だと思います。どちらもおじいさんによる自作自演のサンバです。90年代に彼らのようなおじいさん達が作るサンバが「おじいサンバ」なんてネーミングで呼ばれて、ちょっとだけ話題になったことがありましたが、私も「おじいサンバ」は好きなものが多々あって、その粋で洒落ていて美しい音楽性に心底シビレたものでした。
今回取り上げるギリェルミ・ジ・ブリートの「枯葉のサンバ」は90年発表のブツですが、物憂げで内省的な哀愁漂う音と歌が特徴であります。サンバは賑やかな音楽だと決め付けている人は、これを聞けば「こんなサンバもあるんだ!」とビックリすることでしょう。賑やかなものだけがサンバではないことは知っていたももの、私もこの淡く切ない響きを持ったサンバを聞いた時は結構驚きました。センチメンタルと言いますか、哀しい色やね〜と言いたくなるような文学青年的な佇まいは、非常に新鮮でありました。歌は上手いとは言えませんが、じいさんにしては若々しい朗々とした歌声で、実に味わい深い滋味溢れる歌を聞かせてくれます。こういう歌を聞くと、つくづく歌は上手いとか下手とかいう価値観だけでは決められないものだなあと思います。
バックの演奏は、ショーロ界の俊英であるエンリッキ・カゼスのアレンジによるものですが、控えめでしっとりとしていながらも冴え渡っていて、実に芳醇なまろやかさに溢れています。この歌にはこのバックの音しかない!という感じの素晴らしい演奏を聞かせてくれますよ。
最近はアジアの音楽にどっぷりと浸かっていますので、サンバを聞くことはほとんど無くなっていますが、聞いてみるとやはりしみじみと沁みてくる音楽だと感じます。久し振りにぶらりと立ち寄ったギリェルミじいさんの昔ながらの古ぼけた居酒屋は、昔と同じで全然気取ること無く、素朴でいい味の料理と酒を出してくれた、そんな感じの音楽ですね。
あと、コメント欄に試聴を貼り付けておきますので、よろしければお試しを。