
全く期待していなかったのに、聞いてみたら意外なほど良い作品だったということがたまにあります。宇多田ヒカルのこの最新作は、まさにそんなアルバムですね。彼女のアルバムは、とてつもなく売れまくったデビュー作から全て聞いていますが、これまで一枚として満足のいく出来だったものはありませんでした。強いて言えばデビュー作が一番良かったかなあ、という感じですね。
彼女の場合、デビュー盤が何故か異常なほど売れてしまった為に一躍時代の寵児の如く扱われ、メディアなんかでもちやほやされ過ぎたところが多々あったかと思います。だから色々なところから有形無形のプレッシャーをかけられることになってしまい、本来の自分を出せない状態が続いてしまったのではないかと推測します。そんなことを言っても、多分本人は否定するでしょうけど、私にはそのように感じられました。
というのも、ここで聞ける宇多田は、かなり伸び伸びとしているように聞こえるからです。このアルバムに関しては、発売前から大々的に宣伝されるようなことは無かったようですし、タイ・アップ曲は相変わらず多いものの、無理して売れる曲を書いたという雰囲気はありません。ある程度自分の好きなように作ることが出来たのではないでしょうか?宇多田ヒカルという人は、本来は非常に根が暗い性格なのではないかと私は勝手に思っているのですが、このアルバムはその暗さが素直に出てきていると感じられます。ここに来てやっと正直な自分を出してきたから、自然な仕上がりになったんだと思います。
このアルバムには誰もが「あれ?」と意外に思った曲「ぼくはくま」が入っていますが、この曲って彼女にとっては結構転機になったのかもしれませんね。「こんな曲を作ってもいいんだ!」と、肩の力が抜けたのかもしれません。それが良い方向に影響したような気がします。上野樹里と瑛太が長澤まさみを完全に食ってしまったドラマ「ラストフレンズ」の主題歌も入っていますし、CMなんかで耳にしていた曲も多々入っていますが、だからと言ってシングルの寄せ集めみたいな感じは全く無くて、暗くて地味なトーンでビシッと統一されています。これまでになく充実した、見事な作品に仕上がったと思います。宇多田ヒカル、流石に底力のある人ですね。
離婚後の宇多田はいい感じ。基本的に幸せな状態が似合わない、可哀想な感じがする人ではあります。うーむ、ヒカルの夢は夜開く(意味不明)。
あと、今回は試聴の貼り付けは致しません。宇多田の歌なら色んなところで耳にすることがあるでしょうから。