
メリケンの酔いどれオヤジ、トム・ウェイツの85年作「レイン・ドッグ」です。個人的にはこのオヤジ、あまりに芝居がかった汚い歌い方がわざとらしく感じられて好きではないのですが、このアルバムだけは何故かいまだに持ってます。ヤクザな街の汚い裏通りを負け犬の如く徘徊するダメオヤジの姿が浮かんでくるようで、映画のサントラでも聞いているような気分になりますね。
このアルバム、他の作品と比べて何が違うのかと言いますと、オヤジの汚い声・汚い歌い方というのはいつも通りなのですが、バックの演奏がヨレヨレでヘロヘロなので、このオヤジの芝居に実に相応しい雰囲気を出している点でしょうか。
このブツでバックをやっているのが、哀愁のペンペン・ギターをかます変なギタリスト、マーク・リボーであります(もちろんリボーだけじゃないですけど)。このリボーというおっさん、後にアルセニオ・ロドリゲス作品集を出すという暴挙に出たことで、ワールド・ファンの間でも一躍有名になりましたが、この頃はまだまだ知る人ぞ知るという存在でありました。ウェイツの汚い歌とリボーの変なギターの相性は抜群に良く、このギターの音色はウェイツの汚い歌をわざとらしいと思わせない力を持っています。非常に良い働きをするウェイツの相棒のリボー、思わず韻を踏んでしまったでやんす。もちろん他の楽器のアレンジなんかも最高に良いですよ。
このアルバムは曲の出来も非常に良く、怪しげなストリップ小屋を思わせるような曲やら哀愁漂う美しいメロディのバラード、パティ・スマイスがカバーした「ダウンタウン・トレイン」等、オヤジの才能をさりげなく見せつける内容となっています。そしてそれらの曲が、このオヤジの汚い声に合っているんですよね〜。これなら歌声が汚くても十分に聞くことができます。私はどっかの音楽評論家とは違いますので、声が嫌いだからマイナス10点!なんてことは言いません。
トム・ウェイツのブツに関しては他にも何枚か聞いたことはありますが、やはりこのオヤジは「レイン・ドッグ」に限るでしょう。名盤という評判通りの名盤だと思います。
それにしても、この文章の中で一体何回「汚い」という言葉を使ったのだろう…。
あと、コメント欄に試聴を貼り付けておきますので、よろしければお試しを。