
今時アルジェリアの音楽「ライ」なんかを聞いている人がいるのかどうかは知りませんが、日本で80年代終盤から大爆発したワールド・ミュージック・ブームにおいて、ライも一気に知られる存在になったモノでありました。特に話題を集めたのがシェブ・ハレドの「クッシェ」というアルバムで、好きモノ達の間では大評判になって名盤中の名盤という扱いを受けていましたよね。確かに「クッシェ」は面白いアルバムでわっちも好きでしたが、個人的にライのアルバムで一番好きだったのは、今回取り上げますシェブ・カデールの1989年日本発売盤「ライ」であります。
シェブ・カデールはアルジェリアのオラン生まれですが、両親がモロッコ人ということで国籍はモロッコで、9歳の時にパリに移り住んだというコスモポリタンな経歴の人であります。ですのでヤッテいる音楽は所謂アルジェリアのライとは違っていてどこか洒落てスマートな感覚がありまして、言ってみればパリに住む移民のライという感じになっていると思います。それが実にカッコいいんですよね~。若々しいながらも堂々としているカデールの歌いっぷりもカッコ良ければ、全編で大活躍するアラビア~ンなバイオリンの流麗な響きもカッコ良く、当然のように曲自体もカッコ良いですから、まさに惚れ惚れするような仕上がりになっていると思います。
まあ人によっては「ライなんてどれを聞いても同じ曲にしか聞こえない」、なんて感じたりするでしょう。確かにラシッド・ババがプロデュースしていた金太郎飴的な初期のライはそうかもしれませんけど、カデールさんのライはロック的なダイナミズムも持ち合わせていますし、実にカッコ良くて聞きやすいかと思います。ライ初心者とかライなんて存在自体知らないという人にもオススメ出来る、なかなかの逸品に仕上がっていると思います。当時のライと言えばシェブ・ハレドの「クッシェ」ばかりがクローズ・アップされますが、わっちとしましてはシェブ・カデールの「ライ」もよろしく!ってことで。とは言っても、今時こんな盤はどこにも売ってないと思いますけど・・・。