
ベトナムのポップス歌手、ダン・チャン・ヴィ・タオ(ややこしい名前!)の05年のデビュー作です。当時24歳ですが、年齢と可愛らしい顔に似合わない落ち着き払った歌声が素敵な歌手です。歌の力量には相当なものがありますね。この落ち着き払った声で、夜に聞くのがピッタリという雰囲気の洗練されたシティ・ポップスを歌うのですが、そこはやはりベトナムの歌手、そこかしこにベトナムらしさが現れてきて、非常に魅力的な音楽になっています。どれだけ欧米的な要素を取り入れても、しっとりと心に染み入るアジア的な情感が溢れているのが素晴らしいですね。
このアルバム、全9曲入りですが、前半5曲はスローテンポのじっくり聞かせる曲を並べ、6曲目からテンポアップしたよりポップな曲を配しています。前半と後半で曲調は違いますが、彼女の素晴らしい歌唱によって一本筋の通った作品に仕上がっていますし、このアルバム構成によって歌手としての奥深さを存分にアピールすることに成功しているのではないかと思います。
本作には、ベトナム・ポップスによく聞かれるような音作りのダサさなんてありませんし、普通の人があまり抵抗無く普通に聞けるポップスに仕上がっていると思います。ベトナム・ポップスの進化(深化?)を実感できるアルバムですね。相当にレベルの高い作品だと思いますよ。単にジャケ買いしてみただけのアルバムなのですが、聞いてみてビックリの大当たりのブツでありました。
音楽のレベルが非常に高いアジア地域の中では、ベトナムは音楽後進国みたいな言われ方をされることがありますが、こういう作品を聞くと、そんなことを言っている人は本当にちゃんとベトナム音楽を聞いているのかと、疑問に思ってしまいます。確かにいまだにダサダサの打ち込みの聞くに堪えないものがあるのも事実ですが、一方で本当に素晴らしいものがあるのも事実です。ベトナムの歌手は、歌の力量は優れている人が多いので、プロデュース次第でいくらでも可能性が広がっている、私はそう思っています。本作はまさにベトナム歌手の可能性を示してみせた一枚であると思います。