
アメリカの女流ピアニスト兼シンガーソングライターであるロビン・ホルコムのセルフ・タイトルのアルバムを初めて聞いたのは、もう20年近く前になるでしょうか。本人が写ったモノクロの陰鬱そうなジャケのイメージ通り、音楽も相当に陰鬱でした。
暗くて重苦しい曲調で、突然不気味な転調をするメロディがとにかく薄気味悪く、歌声も魔女のつぶやきのように感じられて、とてもまともに聞いていられない作品でした。まさにアメリカン・ゴシックを体現したかのような、不吉な呪いの世界や血が飛び散った陰惨な農家小屋をイメージさせる音楽でした。こんな音楽を聞いていることが他人にバレたりしたら、きっと気が狂ったと思われるに違いありません。あまりに気持ち悪かったですし、こんなものを持っていること自体が縁起が悪いと思いましたので速攻で売り払いましたが、音楽は強烈に脳裏に焼きついてしまいました。
それから程無くして、ブラリと立ち寄った神戸の中古盤屋ハックル○リーで、あの気持ち悪いブツの次のアルバムにあたるこの「ロッカバイ」を見つけました。あの気持ち悪いブツの印象は強烈でしたが、怖いもの見たさ(聞きたさ?)で、ついついゲットしてしまいました。
また気持ち悪い音楽なんだろうな〜と思いつつ恐る恐る再生してみると、聞こえてきたのはカントリーっぽい雰囲気の、穏やかな表情を持った音楽でした。得体の知れない不気味さはあるものの、 ピアノを中心に淡々と綴られる歌の数々は、悟りを開いたかのような境地を感じさせます。これは素晴らしいと思いました。あの気持ち悪いブツとの共通点も感じられるのですが、こちらの方が前向きな力が感じられますから印象は全然違います。
このアルバムを大変に気に入ってしまいましたので、もしかしたらあの気持ち悪いブツも聞けるかも?などと出来心を起こし、たまたま中古で見つけた気持ち悪いブツをゲットしてみました。すると不思議なことに、聞けるではありませんか!じっくり聞いてみると、少々の気持ち悪さはあるものの、前に聞いた時のような陰惨な雰囲気を持った作品には聞こえず、「ロッカバイ」とそう大きな違いは無いと感じられました。どちらにしても、米国の伝承歌の世界の陰の部分をしっかりと受け継いだ作品だと思います。
現在はどちらのアルバムもほとんど聞くことはありませんが、梅雨の暑苦しい夜に「こんなブツがあったなあ」などと思い出したもので、棚から引っ張り出して聞いてみた次第であります。聞いてみたらどちらも味のある良い作品ですし、このロビン・ホルコムという人は、米国の陰の部分の極めて優れた表現者だと思います。
こちらが気持ち悪いアルバム。

あと、コメント欄に試聴を貼り付けておきますので、よろしければお試しを。