
大学に入った頃に欧米のロックに辟易し、一気にワールド系の音楽にハマったのですが、世界中の色々な音楽を聞きまくってはいたものの、日本の音楽だけはあまり聞かないという状態が続きました。聞いていたのはちあきなおみと、その他歌謡曲やポップス数枚ぐらいでした。例えばルネ、川越美和、石川セリ、門あさ美とか。日本の音楽もちゃんと聞かなきゃいけないな〜とか思いながらも、欧米のロックだけを聞いていた頃に欧米ロックしか聞かない連中から刷り込まれてしまった「日本の音楽は低レベルで下らない」というウソから抜け出せず、どうしても後回しになっていました。
考えてみれば、欧米のロックしか聞かない連中に、日本の音楽がわかるはずないですよね。聞いてないんですから。連中は(私も含む)日本の音楽なんて何も知らないクセに、ラジオとかテレビとかでちょろっと耳にしたことがある流行曲だけで「日本の音楽はダメ!」なんて決め付けていたわけですから、クルクルパーも甚だしいと思います。そんなことを言うと「いや、オレは真剣にちゃんと聞いたことがあるけどダメだったのだ!」などと反論するヤツもいますが、最初から「日本の音楽はダメ!」と決め付けた耳で聞いたって、良さがわかるはずがありません。耳を塞ぎながらでは、音楽はちゃんと聞こえませんから。
そんな私を「やっぱりちゃんと日本の音楽を聞かなきゃいけないな〜」と思わせたブツが、雨上がり決死隊の蛍原に似ているヤマジカズヒデの、92年作「CROWL」でした。宅録風のひんやりしたサイケな感触の音が出てきた瞬間に、周りの空気感までも冷ややかな色に染め上げてしまう独特の音世界に、日本にこんな凄いヤツがいるのか!と驚いたものです。あまり体温を感じさせない歌声といい、全く意味がわからない歌詞といい、胸締め付けられるような切ないギターの音色といい、全てが控え目であまり自己主張を感じさせないクセに、聞く者を自分の世界に引きずり込んでしまう強烈な磁場を持っています。
その後ヤマジはdipというサイケなバンドを組んで、独特の音世界を更にパワーアップしていますが、基本は一人で全てが完結してしまう人なだけに、あまりバンドという形態が合っているとは思えません。やっぱりこの人は、宅録風の音でセコセコと一人でやっている方が似合っているような気がしますね。
先日、この人のソロ・アルバム3枚をひとまとめにしたボックス・セットが発売されましたが、ここらでまた控えめで自己主張を感じさせない強力なソロ・アルバムを出して欲しいものだと思います。
あと、この人がメインの映像ではないのですが、とりあえずコメント欄に試聴を貼り付けておきますので、よろしければお試しを。