『THE MAD CAPSULE MARKET’S 「PARK」』
gmadcapsule001.jpg

 日本のハード・ロックはメチャメチャにレベルが高い、ということを知ったのは、マッド・カプセル・マーケッツの94年作「PARK」を聞いた時でした。近年はデジ・ロックとかいう言葉で語られることが多いバンドですが、最初の頃はハード・ロックやらメタルやらヒップ・ホップやらポップスやらをゴチャ混ぜにした、激烈なミクスチャー・ハード・ロックを展開していました。本作はその時期の彼等の最高傑作であると、個人的には思っていますし、クール・アシッド・サッカーズの「いつまでもお元気で」と並ぶ、90年代に日本のミクスチャー・ハード・ロックが到達した金字塔であると思っています。


 このアルバムには、異様にテンションの高い凄まじい激演もあれば力を抜いた軽めの曲もあったりして、彼等の懐の深さを感じさせてくれます。そしてアルバム全体に一貫しているのが、親しみやすいポップさがあることです。激しいクセに人の耳を惹きつけるポップなフックを持っていますので、結局は何度も繰り返して聞いてしまうことになるんですよね〜。本当に繰り返し聞きまくりましたが、特に気合を入れたい時とか怒り爆発した時なんかは、周りの迷惑も顧みず大音量で聞いたものでした。


 このアルバムが出た時期、90年代初めから中頃にかけては、メリケンを中心にグランジ・ロックなるものが流行り、汚い格好をした連中が激烈な音を出すハード・ロックが盛り上がっていましたが、マッド・カプセル・マーケッツはその手の連中とは完全に一線を画していました。彼らは人の耳を惹きつけるポップな要素と極めて安定した演奏力を持つことで、仲間内だけで盛り上がっているような閉塞感があったグランジ・ロックの連中とは一味も二味も違う音楽性を獲得していましたので、グランジの限界を楽々超えてしまう大衆性があったように感じます。ですから世界的に見ても彼等の音楽は突出していたと思うのですが、こんなことを考えているのは私だけでしょうか?


 このアルバム以降はメンバーの脱退なんかも影響があったのか、デジ・ロック的な音に傾いていきましたので、私は急速にこの連中への興味を失ってしまいました。最近は活動を休止しているとかいう噂も聞きましたが、本当かどうかは知りません。ここ数年は名前を思い出すことさえほとんど無い連中でしたが、何故かふと思い出したもので、久し振りに聞いてみたところやはり良いものは良い、という感じでございました。


あと、コメント欄に試聴を貼り付けておきますので、よろしければお試しを。
【2008/07/09 21:56】 東アジア | トラックバック(0) | コメント(3) |
『ヤマジカズヒデ 「CRAWL」』
gyamaji001.jpg

 大学に入った頃に欧米のロックに辟易し、一気にワールド系の音楽にハマったのですが、世界中の色々な音楽を聞きまくってはいたものの、日本の音楽だけはあまり聞かないという状態が続きました。聞いていたのはちあきなおみと、その他歌謡曲やポップス数枚ぐらいでした。例えばルネ、川越美和、石川セリ、門あさ美とか。日本の音楽もちゃんと聞かなきゃいけないな〜とか思いながらも、欧米のロックだけを聞いていた頃に欧米ロックしか聞かない連中から刷り込まれてしまった「日本の音楽は低レベルで下らない」というウソから抜け出せず、どうしても後回しになっていました。


 考えてみれば、欧米のロックしか聞かない連中に、日本の音楽がわかるはずないですよね。聞いてないんですから。連中は(私も含む)日本の音楽なんて何も知らないクセに、ラジオとかテレビとかでちょろっと耳にしたことがある流行曲だけで「日本の音楽はダメ!」なんて決め付けていたわけですから、クルクルパーも甚だしいと思います。そんなことを言うと「いや、オレは真剣にちゃんと聞いたことがあるけどダメだったのだ!」などと反論するヤツもいますが、最初から「日本の音楽はダメ!」と決め付けた耳で聞いたって、良さがわかるはずがありません。耳を塞ぎながらでは、音楽はちゃんと聞こえませんから。


 そんな私を「やっぱりちゃんと日本の音楽を聞かなきゃいけないな〜」と思わせたブツが、雨上がり決死隊の蛍原に似ているヤマジカズヒデの、92年作「CROWL」でした。宅録風のひんやりしたサイケな感触の音が出てきた瞬間に、周りの空気感までも冷ややかな色に染め上げてしまう独特の音世界に、日本にこんな凄いヤツがいるのか!と驚いたものです。あまり体温を感じさせない歌声といい、全く意味がわからない歌詞といい、胸締め付けられるような切ないギターの音色といい、全てが控え目であまり自己主張を感じさせないクセに、聞く者を自分の世界に引きずり込んでしまう強烈な磁場を持っています。


 その後ヤマジはdipというサイケなバンドを組んで、独特の音世界を更にパワーアップしていますが、基本は一人で全てが完結してしまう人なだけに、あまりバンドという形態が合っているとは思えません。やっぱりこの人は、宅録風の音でセコセコと一人でやっている方が似合っているような気がしますね。


 先日、この人のソロ・アルバム3枚をひとまとめにしたボックス・セットが発売されましたが、ここらでまた控えめで自己主張を感じさせない強力なソロ・アルバムを出して欲しいものだと思います。


あと、この人がメインの映像ではないのですが、とりあえずコメント欄に試聴を貼り付けておきますので、よろしければお試しを。
【2008/07/08 22:54】 東アジア | トラックバック(0) | コメント(1) |
『ちあきなおみ 「ねえあんた」』
gchiaki001.jpg

 小学校の低学年の頃、朝6時半頃に起きて寝ボケながら食卓へ行くと、しょっちゅうラジオから流れてくる曲がありました。ちあきなおみの「四つのお願い」でした。当時ヒットしていた曲というわけではないのに、何故か本当に良く流れていました。きっとDJの方が好きな曲だったのでしょうね。超ポップなメロディと妙に艶めかしい歌声が子供ながらにメチャクチャに好きになって、強烈に耳に残る曲となってしまいました。おかげで、「ちあきなおみ」と言えば「四つのお願い」、という具合に刷り込まれてしまいました。もちろん「喝采」とか「X + Y = LOVE」なんかも超大好きな曲なんですけど。


 子供の頃に強烈に耳に残ってしまった曲というのは、年月を経ても記憶に残っているものだと思います。「四つのお願い」と同じように頻繁にラジオから流れていた沢田研二の「追憶」とか、フィンガー5の数々のヒット曲とか。他にもラジオやテレビから流れてきた曲で、意識もしていないのに自然に耳に残っている曲は多々あります。


 その後ちあきなおみも沢田研二もフィンガー5も忘れてしまい、白人のロックしか聞かない高校時代を経てワールド系の音楽を色々と聞き始めた学生の頃のある日、何気なく点けたラジオから強烈に聞き覚えのある曲が流れてきました。ちあきなおみの「四つのお願い」でした。思わず立ち尽くしたまま聞いてしまいました。子供の頃に好きだと感じたものは、やはり時が経っても好きなんだと思いました。ロック〜ワールド系の音楽を色々と聞き漁るようになっても、自分の基本は子供の頃から耳にしていた歌謡曲にあるのだろうな、とその時思いました。


 それからちあきなおみのベスト盤を買って「四つのお願い」はいつでも聞けるようになったものの、そのベスト盤には「X + Y = LOVE」が入っていなかったりして、満足のいく選曲ではありませんでした。代表曲をまとめて聞ける何か良いベスト盤はないかと思い、他に色々探してみましたが、結局見つかりませんでした。


 それからまた月日は流れ、2000年のことですが、ちあきなおみの6枚組コレクション「ねえあんた」が発売されるという情報を得ました。「これはゲットせねば!」と思ったものの、どこへ行っても速攻で売り切れで(元から入荷してなかった?)、入手することはできませんでした。


 そしてそれから3年ほど経って、北九州は小倉のブック○フをブラブラしていた時、演歌コーナーに「ねえあんた」が鎮座しているのが目に入りました。一瞬目を疑いましたが、間違いなくそこにあります。「おおっ、やった!」と、喜び勇んでゲットしたのは言うまでもありません。5000円也。このブツ、全118曲入りで、ちあきのコロムビア時代の音源は大体網羅していますので、聞きたかった時代のちあきの歌が存分に聞けるわけであります。私はちあきなおみを「日本最高の歌手」と評価していますので、この6枚組は本当に宝ですね〜。


 このブツ、これまで何千枚と聞いてきたCDやLPの中からベスト10を選ぶとすれば、間違いなく入ってくる作品です。頻繁に聞くことはありませんが、折に触れて聞いて「嗚呼、やっぱりええなあ・・・」としみじみ感じるコレクションなのであります。FAYRAYの「HOURGLASS」、ブアチョンプーの1枚目のアルバム、テパパの唯一のアルバムなんかと並んで、私にとって無くてはならない存在です。


あと、コメント欄に試聴を貼り付けておきますので、よろしければお試しを。
【2008/07/04 22:32】 東アジア | トラックバック(0) | コメント(3) |
『鬼束ちひろ 「インソムニア」』
goni001.jpg

 鬼束ちひろの01年発表の、ヒット・シングル「月光」と「眩暈」を含むデビュー・アルバムです。「月光」というタイトルに象徴される通り、暗闇の中に浮かび上がる冷たく青白い月光の如く静謐で美しい作品です。時に何かに取り憑かれたかのように、時に全てを諦めてしまったかのように、独特の言葉使いで歌う彼女の鬼気迫る歌は衝撃的でした。


 歌も歌詞も非常に暗いのですが、気が滅入るようなものではなく、心の襞にそっと入り込んでくるような暗さなので、聞けばかえって心が落ち着きます。デビュー当時は色々なところで癒し系と言われていましたが、おそらくこれが彼女が「癒し系」と言われる所以でしょう。ちょっと心が沈んだ時、心を落ち着けたい時なんかに処方すると、非常に効果的です。私にとってこのアルバムは鎮静剤とか鎮痛剤みたいな存在で、発表から既に7年経ちますがいまだに良く聞いていて、効果は衰えることがありません。


 このアルバムに収録された曲は、彼女がデビューする前から書き溜めていた曲も含まれているようですが、全てが暗く青白く光るような美しさを持った曲で、他のどのアルバムよりも出来が良い曲が揃っているように思います。中でもやはり「月光」は彼女が書いた最高の曲だと言えるでしょう。「月光」を聞いた時に、おそらく今後この曲を超える曲は書けないのではないかと思ったのですが、残念ながらそれは現時点では現実となってしまっています。このアルバムで鬼束は頂点を迎えてしまい、その後は急激に失速してしまうのでありました。


 音楽的な失速に同調するかのように事故や病気なども続き、しばらく音沙汰が無くなってしまいましたが、やっと最近になって活動を再開し始めました。しかし久し振りに聞いた彼女の歌は、声は出ていない、音程は取れていない、どんなメロディを歌っているのか全くわからない、あまりに無惨なものでした。この衰えぶりには激しくショックを受けてしまいました。こんなことなら復活しない方が良かったのかも、などと不謹慎なことを思ったりもしましたが、やっぱり応援し続けていこうと思っています…ということは先日取り上げた彼女の最新作のネタで書きましたね。


 今後彼女がここで聞かせてくれた程の輝きを取り戻せるかどうかは全くわかりませんが、とりあえずはこの作品を残したことで、彼女の名前が日本のポップス史に刻まれることになったのは間違い無いと思います。日本のポップスに興味がある人なら、一度は耳にしても良いアルバムなのではないでしょうか。


あと、コメント欄に試聴を貼り付けておきますので、よろしければお試しを。
【2008/07/03 23:00】 東アジア | トラックバック(1) | コメント(3) |
『柴田淳 「ため息」』
gshibata001.jpg

 数年前の話、とある中古盤屋でブツを物色していたところ、ある歌が聞こえてきました。ピアノのイントロで始まるキレイな声の女性歌手の曲で、葛藤とか諦めが入り混じった凄まじい情念が渦巻く歌でした。誰の何と言う曲なのかは全く知りませんでしたが、強烈に耳に焼き付いてしまいました。それからというものの、耳にこびりついた「ため息ひとつ」とか「ため息ふたつ」とかいう歌詞のその曲のことが、気になって仕方ありませんでした。一体誰の曲なのか調べようと、ネットでその歌詞を検索してみたのですが引っ掛かるものは無く、しばらくは謎のままでした。


 それとは全然関係無く、ちょうど同じ頃に確かめざましテレビか何かで、柴田淳というシンガーソングライターがちょろっと紹介されていたことがありました。たまたまそのことを思い出して「柴田淳」でネットを検索してみると、「ため息」という曲を出していることを知りました。ここでピンと閃きました。もしかしたら「ため息ひとつ」とか「ため息ふたつ」とかいう歌詞の曲は柴田淳の「ため息」という曲ではないのかと。


 そこですぐにレンタル屋に行き、「ため息」が収録されたアルバムを借りました。そして「ため息」と題された曲を再生すると、それは思った通りにあの「ため息ひとつ」「ため息ふたつ」という歌詞の曲でした。やっと出会えた、という感じで非常に嬉しかったですね〜。その「ため息」が収録されたブツが、「ため息」と題された03年の彼女のセカンド・アルバムです。


 このアルバム、「ため息」以外にも素晴らしい曲が満載であります。いかにも日本的な湿っぽさを持った切ないメロディがズラリと揃っています。そんな中に遊び心を感じさせる曲とか本人演奏の短いピアノ・ソロなんかも挟み込まれていたりして、飽きさせない作りになっています。一人で静かな夜を過ごしたい時にはピッタリとハマるアルバムですね。本当に素晴らしい作品だと思います。一応彼女のアルバムは全て聞いていますが、間違いなく本作が彼女の現在の所の最高傑作だと言っていいかと思います。最近出た新作は、まだ聞いてないんですけどね。


 ただこの人、音楽的にはあまり引き出しが多い人ではないようで、これ以降はどれを聞いても似たような曲ばかりという具合になってしまうのですが、変化が少ない分安心して聞けるということも言えるわけであります。この人の場合はそれでいいんだと私は思っています。変わらない方が良いという人はやはりいるわけでありまして、例えばタイのルークトゥン歌手フォン・タナスーントンなんかもそんな人ですよね?柴田淳もフォン姫と同じタイプの歌手だと思っております(同じか?)。


 何にせよ、このアルバムが珠玉の名盤であるという事実に変わりはありません。いつでもすぐに手に取って再生できる場所に置いてある、私にとってはそういうアルバムです。聞けばその素晴らしさに「ため息」が出るブツなのであります。


あと、コメント欄に試聴を貼り付けておきますので、よろしければお試しを。
【2008/07/01 23:04】 東アジア | トラックバック(0) | コメント(5) |
前ページ | ホーム | 次ページ